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株式会社田中俊行建築空間設計事務所は、用途・規模・構造を問わず、あらゆる建築作品を設計する事務所です。

第3回渡航2009年7月14日(火)~19日(日)

第1日目

9時
竹芝桟橋着。
腰痛が酷く、やっとの思いでここまでたどり着いた。

今回の渡航者はかなり多いようにみえる。
当初は設計チーム3人で乗り込む予定が、結局前回と同じ私一人となる。分担できるはずの荷物が不可となり、加えて2物件分の荷物となり、キャリーカートの悲鳴は私の腰と共鳴しているように感じる。

昨日誕生日だった37歳の情けない門出である。


9時15分
受付終了し、ベンチに座る。
若い男性が私に歩み寄り、パンフレットを渡す。
どうやらウミガメの産卵時期らしく、ルールを厳守するよう記されていた。


10時
出航。

指定席であるのと3回目の渡航であるので、少々調子に乗り、急がず最後尾で乗船。
自分の席に着くと誰かが間違えて荷物を置いている。
腰痛の為、甲板には出ずに静かに横になろうと考えていたのに、いきなり出鼻をクジカレタ。
早く戻って来いと思うのだが、荷物が邪魔で自分の居場所を失い、船内をウロウロし、仕事を始める準備をする。


10時半
それにしても観光客と思われる人間が多い。
若僧のエネルギッシュな笑い声にイライラさせられる。


10時40
私のプライベート空間を邪魔される。
酔っ払いの乱入。
仕事をしていた私の周りを3人で囲み、「一緒に酒を飲むぞ」と缶ビールを渡される。
私の過去から現在の会社の様子が酒のツマミになる。


11時半
一度席に戻る。

私の席に中年のオッサンが寝ており、シメシメと叩き起こす。
相手が否を認めたので笑顔でどいてもらう。
宴の席に戻ると眠そうな顔をして待たれており、12時半をもって宴は終了。
急いで会社に連絡するも昼休みということもあり、不通となる。


13時
ソファにて足を伸ばしながらメールチェック。


13時半
観光客の騒ぎ声が私の仕事を邪魔する。
腰痛だというのに場所を移動せざるを得ない騒ぎよう。
一周して祈るように先ほどまでいた場所を覗くと、DSゲームが最高潮に盛り上がっている。
肩を落とし、右足を引きずりながらベッドに向かい、眠くもないのに横になる。


14時
電波が圏外と圏内を行き来する。
今回の渡航は幸いほとんど船が揺れない。
揺れないとなると、揺れて欲しいと思うのが性格の悪さで、どんどん揺れて、ひっくり返るくらい揺れて、あの若者たちが船底へ戻ってくれと…。


17時
どうやら少し寝てしまった。
今まで2回の渡航とはまったく異なる穏やかな波を嬉しく思う。

今日は人々が寝静まってから活動しようと思う。
夕焼けはまぶしく、今夜は満天の星空を演出してくれるのであろう。


20時
横になっていたが耐えられず、人々の集うデッキへ移動。
外国人がいると遠慮する風習があるのか、ドイツ語を話すカップルの隣が空いていた。


この場に一言記しておきたいと思う。

「気づいている方も多いかと思うが、私は現在、自分の作品を創れる場を探し求めている。
これを実現する為に、妥協する気はまったくない。

頭の中に建てたい建築像があり、それを実現できるのは、都会ではないと感じている。
都会だけではなく、建築基準法が支配する領域では不可能なのかもしれないと…。
上記理由により、国外で活動することも考えたが、それを決定させるのは『日本国内、どこにもこの作品を築くことはできない』と自分なりに強く納得してからと考えている。
………ということで、父島が現在のところ第一候補である。
但し、施主を口説き落とし嘘も方便で建てさせてもらうというような事はしたくない。
であるから、数十年後に父島に作品があるかもしれないし、第二第三の候補地を探すかもしれない。父島とのコミュニケーションは始まったばかり。
2件目の仕事を頂戴して今回の渡航であるが、建築家として島だけでなく島民が私を受け入れてくれるか、私の創りたい作品を受け入れてくれるか…。

現在の仕事とは、意匠的にまたは私の作品性などにはほとんど関係のない領域であるが、それを恥じてはいない。
以前からコラムに記 しているが、島民から感謝される仕事をして、建築家として信頼を得る事は、一作品を創るプロセスの中で最重要事項である。
初対面の私よりも私の性格や生き方、酒の飲み方などを知った上で、数年後に私の提案する作品を建てさせたいと考えてくれる人がいるか問いたい。
私という人間を知った上で、私の提案する建築を建てさせてくれる人が現れた時、私は人生をすべてかけても良いと思うほどの喜びに満たされることであろう。この作品を実現できるまでは生かさせていただきたい。」


21時15分
こんな真面目な事を考えているのに、通りすがりの酔っ払い2人に声をかけられる。
赤い顔をして、「仕事しているのか」だの「このパソコンはどうの」と私がTシャツ短パン姿だからといって遠慮なく話しかけすぎだろうと…思ったらまた来ヤガッタ。
コイツラあとでゲーゲーするぞと忠告してやりたい。


22時
そろそろ星空を見に行こうかと立ち上がる。
独りで夜の甲板は恐怖心を得る。
手摺にしがみつき、空を見上げるのだが、真っ暗闇に波の音とエンジン音。
誤って海に落ちたら誰も気付かぬであろう。

普段は見られないほど美しい星空の下、吸い込まれそうな孤独感を味わう。


23時
私と同年代に見える男女3人が、私に話しかけたそうなそぶり。
見て見ぬ振りをして持参したカップラーメンをススル。
特に仲良くなる気もせず、他物件の設計主旨を記す作業を開始。

今回の渡航はほとんど揺れない。
こんな波であれば、25時間半乗船していても苦にならないのかもしれない。


24時
消灯。
仕方なく部屋に戻ると、イビキの大合唱。
私の上のベッドの人が寝返りをする度にきしむ音、ちょっと太りすぎではと独り言を言いながら、自分の腹にも目をやり、軽くタタク。

それにしても暑い。
前回の渡航で上階ベッドは全て空室であったので、単純に2倍の人数がひしめき合っている。
空調は付いているのだが、容量が不足している感あり。
柔軟体操をしながら「ぎっくり腰リーチ」の体に鞭を打つ。


第2日目

5時半
起床。
暑いのと痛いので、ほとんど眠れなかった。
まだ静かな船内をウロツク。
父島写真03-05


6時
顔を洗い、デッキにて写真を一枚。
強烈な朝陽に青い海と青い空。
雲は散歩しているかのようだ。

単純な構成だが気持ちが高揚する。
父島写真03-01


7時
船内アナウンス。
到着予定時刻11時半(予定通り)。


7時半
窓の外に2羽の鳥。
船に並走するもシャッターチャンスを失うほど、自由に円弧を描く飛行。
父島写真03-02


8時
まだ到着前だが、到着後直ぐに重要な打合せがある事を思い出し、戦闘モードに入ろうとするが、窓の外の鳥たちをうらやましく思う。
黒い翼で黄色い口ばしのカツオドリ。
こんなに長時間船に並走して迷子にならないのか。
彼らの辞書には迷子という文字はなく、これが自由というものか…。

どこから集まったか知らぬ間に群れは10羽以上になる。
こちらを眺める鳥、回遊しながら楽しむ鳥、突然海に突っ込む鳥、
自慢の翼を見せつける鳥など様々である。
背景には雲の集団移動。
一番遠くに見える雲までは何キロ離れているのだろうか。


11時20分
湾内へ。
父島写真03-06

父島写真03-07

何時も通りの父島タクシーがクルーザーで出迎え。
もう見慣れてしまったが、彼らは毎回やっているのだろう、営業効果はあるのか。
父島写真03-03


11時半
上陸。

今回の宿は前2回とは違い、「ガジュマル」という名前だったか…。
いずれにしても二見港から近いので、一人歩いて到着。
のんびりした雰囲気のお母さんとその妹さん。
日本語は書けないといわれ、笑顔でトーク。
3人での予約が結局1人になった事を詫び、早速部屋へ。
トゥウィンのベッドのある部屋を用意してくれていた。

前回までの宿「シルバームーン」よりは明らかに快適だ。
(あの不便さも魅力的なので「シルバームーン」の魅力も捨て難いが…。)

予約電話時に「空調は壊れそう」と言っていたから、この状況を見ると新しく取り替えてくれた事は明白。
何だか申し訳ない歓迎ぶりに、春日部市産の麦わら帽子をかぶり、一礼をして打合せ場所へ向かう。
父島写真03-04


13時半
打合せ開始。
地元の工事会社との打合せ。
意見を言うにものんびりしていて、イライラするのだが、
これが島のルールと言い聞かせ、何とかその場をしのぐ。


16時半
打合せ終了。
宿に戻るとお母さんが、「暑かったでしょう」に加えて英語ナマリの日本語を発し、テキトウにうなずいて玄関の中へ。
すると冷蔵庫を開け、「ウェルカムビールorウォーター?」と聞かれた。
こんなことまで言ってくれる宿は初めてだ。
仕事を残しているので、ビールを取ろうとする仕草のみで笑いを頂戴し、部屋にこもり、設計スタッフと電話&メール。
明日の朝9時からの打合せに備える。

大変申し訳ないが、クーラーを付けさせていただいた。
何しろ汗ダクで、腰痛で右足も動き悪く…という言い訳付き。
お母さんらは外のベンチで気持ちよさそうに談笑している。


19時
散歩をしながらカメの産卵場所スポットへ。
明るいこともあり、そんな雰囲気ではなく、一杯飲みに行くかと決意する。
場所は勿論、ボトルキープされている場所。
いつもの、いつもの店へ吸い寄せられる。
少々不安あり…皆が知らん顔したことを想起し。
そもそも、店にそんな印象を与えるから今になって不安を感じるのだと後悔。


19時半
入店。
やはり覚えられていた。
感謝感激と思ってしまえば店の思う壺。
前回何を頼んで好んで食していたのかと考えながら注文。
間違いもあり訂正しても笑顔で応えてくれる女性定員のありがたみを感じる。


20時
ボトルキープした焼酎の減りはペースアップし、周囲の客は次第にいなくなる。
そんな中、船内で私にチョッカイを出してきた、男女三人が入店。
昨晩の事は覚えていないらしい。
まったくあかの他人で過ごす。


20時10分
突然の電話。
大手設計事務所の方から。
ある大きな物件を一緒にやらないかとの問い。
これも何かの縁。
了承して直ぐに席に戻り、店員全員に一杯おごる。

カメ店長(分からない人は出張日記1へ)も横目で見ていたくせに、ビール一杯飲もうという掛け声で宴に参加。

楽しくてたまらない。
あまりに楽しくて、話が宇宙人やUFOまでに発展。
この楽しさは最終日に残しておきたいと思う。


22時
会計を済ませ、宿に帰るふり。
ウミガメの産卵ポイントに足を向ける。


22時半
あの珊瑚海岸に到着。
ドデカイカエル2匹に迎えられ、空を見上げる。
星座は知っている方だと思っていたが、これだけ星があると何座なんてわからない。
天の川も数十年ぶりに見た。
大きな綺麗な星たちが、何かを語ろうとしているように感じる。
あと2晩で何かを感じて帰りたいと思う。

独りの夜は、比較的好ましい。
独りであるから多くの他人と話しすることができ、学ぶことも多いと認識している。


23時
結局産卵するカメには会えなかった。
また明日と言い聞かせ、帰路。


23時10分
玄関を静かに開ける。
皆寝ているだろう。
そろそろと階段を上がると下からお母さんの声。
振り向くと、お風呂に入るのか、朝食を作ろうかと涙が出そうなお言葉。
「ありがとうございます!」と明日の起床時間を告げて部屋に入る。


23時半
やはりメールが混在していた。
明日9時からの打合せに備え早く寝ようと誓う。

腰痛は相変わらず、爆弾のよう。


第3日目

7時半
起床。
予定よりも遅く起きてしまった。

どこかに起こしてもらえるという甘えがあったか。
直ぐに風呂に入り、脱衣室にて身支度をしていると、味噌汁の匂いと目玉焼きの音。
もうこのような経験は数年していない。

何だか嬉しくなってしまった。


8時
挨拶を交わし、朝食。
「こんな食えるか?!」といいたくなる程の量に驚く。
パッションフルーツの食べ方指導の後、箸を持つも、すぐに食べ終えてしまった。
「おかわりは?」と聞かれたが、さすがに左手で腹をたたきながら丁重にお断り。


8時15分
急いで打合せ準備を整える。
ベッドはあるものの、この部屋は完全に私のオフィスのようになっている。
父島写真03-08


8時30分
宿を出る。

全ての挨拶がここを自宅のように錯覚させる。


8時45分
いよいよ急な登り坂にさしかかる。
歩きながら何かがおかしいと思っていたが、昨晩まであれだけ痛かった腰痛が完治していた。

何時から治っていたかと考えたら、朝の風呂では腰が痛くてシャワーヘッドを落としてしまったので、それ以降。
朝食を食べる前に椅子に座るのに苦労したが、立つときは何でもなかった。

座った椅子が良かったのか、食べたものが良かったか、環境か…。


9時
打合せ場所へ到着。
六本木の会社とメールでやり取りしながら打合せを終える。
便利な世の中になったものだ。
オフィスごとここに移動してきたようなものだ。


11時
打合せ終了。
帰りの徒歩で地元の工事会社と世間話。
昨晩のドデカイカエルの話をしたら、絶対に触ってはならないと注意される。
ドクガエルといって、触った手で目をこすれば失明するらしい。


11時半
天気も良く、歩いていて気持ちが良い。
父島写真03-09

父島写真03-10

施主と3人で歩くもこれが仕事でなければまた違った開放感があるのではと、お互いに苦笑い。
支庁へ出向き、午後の打合せ準備を早々に終わらせ宿へ向かう。

途中、スーパーへ立ち寄り、昼飯を探す。
これまたビックリ、カメ店長と遭遇。
何でまたこんなところでとお互いに微笑。
その動揺のまま烏龍茶と弁当を手にしてレジで会計をすると1,030円!
貧乏性の私は声を発してしまった…「弁当は580円でしょう?!」と。

見ると手にした烏龍茶は1リットルで450円。
500ミリの烏龍茶を2本買っても300円なのに、何で1.5倍もするのか…。
まぁしゃぁない…前回もこれにちかいことあったと思い、宿へ戻る。
父島写真03-11


12時半
昼を食べたからか、こちらに来て間もないが太った気がする。
こちらに来たら汗もかくし、少しはやせるかと思っていたが、それに反する状況に頭を垂れる。
垂れると腹が見えて落胆し、顔を上げると正面に鏡がありうんざりする。
父島写真03-12


12時40分
アホなことを考えていないで仕事の準備に入る。


13時
宿を出る。


13時5分
寄り道をしようと考える。
ウミガメの産卵は今日くらいが最後ではといわれたので、明るいうちにその場所を確認しておきたかった。
父島写真03-13

メジロやその他知らない綺麗な小鳥が至近距離でさえずり。
写真を撮ろうとカメラを向けると隣の木へ、私のカメラワークをあざわらうかのようだ。
諦めて綺麗な海で一枚写真を撮ると、そのレンズの中に海坊主おじいさんが入ってしまった。
父島写真03-14

何でそこにいるのよと落胆して下を向くと、干上がったドクガエルを発見。
これは容易に写真に収められた。
さぞかし熱かったろうに…。
父島写真03-15


13時25分
打合せ場所へ到着。
5分前であったので植物を観察。
父島写真03-16

父島写真03-17

父島写真03-18

父島写真03-19


13時半
打合せ開始。

相変わらず、たらい回しと縦割り社会の典型で、打合せの進捗が難航する。
ただ進歩した点は、支庁の方々に私が覚えてもらえたこと。
そしてたらい回しにあっても、打合せをまとめあげる能力は、無駄に37年生きていない証か。


15時
打合せ終了。
喫茶店にて内輪での打合せ。
入店と同時に突然のスコール。
危うくパソコンが壊れるところであった。


15時半
雨もやみ、16時からの打合せ場所へ移動。
道路を濡らした雨水は即座に蒸発し、湿度の高い熱風と、涼しい風が交互にやってくる。
それが次第に熱風だけとなり、更には風もなくなり、サウナ状態となる。

その時、最後の上り坂の登場。
かなりの急斜面を登った先に、打合せ場所がある。


16時
打合せ場所へ到着。
ご想像のとおりの汗。
これから住民説明会だというのに、柔道の稽古をした後のような体と衣服。


17時
住民説明会から開放される。
氷枕のように衣服が冷たい。

急いで外に出ると、一瞬にして通常の衣類に戻った。
それもつかの間、直ぐにまた汗、汗、汗。


17時半
明日の現地調査用に、ある物をスーパーで探す。
それさえあれば完璧だったのだが、見つけられずに断念。
明日の朝までに代役を考えようと思う。


18時
会社に電話をするのを忘れていた。
「特に何もなし。」とのコメントで安堵する。
明日の打合せ準備をして、今夜もウミガメの産卵場所に行こうと思う。


18時半
決まったように何時もの店に行くのを嫌い、遠回りしてと思ったが、比較的単純にあの店へ導かれる。
父島写真03-20


22時半
今回の宴は省略。
常連客が女性店員にちょっかいを出し、カメ店長の怒りが爆発した模様。
報告するとしては1升瓶を追加した程度。


23時
店を出る。
父島写真03-21

海岸へ行くと、満天の星空。
写真に収めたいと思うがそれもできず。
主役のウミガメは現れず。
テキトウに海岸沿いを歩く。
本当に星が綺麗だ。

行き止まりとなり引き返す。
今日も貧乏くじと言い聞かし、星空を見れただけ、嬉しく思わせる。


23時半
道行く先に黒い物体あり。
ウミガメだ。

この感動は申し訳ないが省略。
写真撮影も不可と言われ、何の証拠も残らない。
この偶然は、宿のお母さんからもカメ店長からもありえないと否定されていただけに伝えようのない喜びがある。


24時半
ベンチに座り、缶ビールを飲む。
感動の余韻を堪能する。


25時
宿に戻る。


第4日目

7時
起床。
前回は小鳥のさえずりが目覚ましだったが、
今回は窓を閉め切ってクーラーを付けているため、日差しの眩しさで目を覚ます。


7時10分
風呂に入ろうとしたら突然のスコール。
これにも慣れてきた。

風呂からあがると何時ものように朝食が用意されていて、あたりまえのように席に着き、あたりまえのような挨拶を交わし、気を遣わずに生活ができる宿に感謝。
昨晩のカメの話をしたら一緒に驚いてくれた。


8時
出発。
相変わらず寄り道しながら打合せ場所へ向かう。
父島写真03-22


10時
現地にて打合せ。
担当の方は昨晩の居酒屋で会った方だ。
大勢での宴はサッカー大会の打ち上げだったらしい。


11時
独り残り、現地ビデオ撮影。
ビデオカメラはしぜんとと珊瑚礁の海を撮りたくなるが、それをぐっと堪えて90度回転。
父島写真03-23
ウミガメの産卵後の足跡


11時半
雲行きが怪しくなり、急いで帰り支度。

何時もは宿までの道のりは海岸線を歩くが、今回だけはショートカットできるトンネルへ。
このトンネル何の為かと思うのだが、防空壕らしき風貌もあり、暗闇に独りでの歩行は暑さを忘れる。
振り向くとスコール。
ギリギリセーフであった。
ついているのかいないのか。
父島写真03-24

トンネルを出るとスコールは止んでいた。
宿はトンネルのすぐ横。
宿のお母さんは「スコールで濡れた?」と聞くが、まったく濡れていない私の姿を見て、この強運ぶりを笑う。


12時
荷物を玄関に仮置きさせてもらい、昼飯を物色。
今日はだまされないぞと気合を入れて値札チェック。
今日のお茶は1リットル210円。

「ヨシヨシ…」と呟きながら、少し大きな声であったと周囲の目を見て感じる。


12時50分
宿での朝食は500円で飲み物とフルーツまで付くのに、何でこれっぽっちの弁当が580円なのかと首をかしげながら容器をゴミ箱へ入れる。
飲み物は昨日買い置きしておいたのに、新たに購入した後悔。

「馬鹿だよな~何ムキニナッテンノ」と独り言。


13時
気を取り直して午後の打合せ現場に向かう。
こちらの役所の昼休みは13時半までと長い。
職員は一度家に帰って食事をしている様子。

1時間の昼休みに慣れている私にはちょっとイラっとするが、その時間は寄り道ができる時間と解釈。
父島写真03-25


13時半
打合せ。
書いて良いかどうか分からないが、何度も何度も聞いている内容なのに、
コロコロコロ$#&~!”$%~=**&%$#FGKLWORUTNEM%YTUIFJEKJ(解読不能)。


15時
無事?終了。

会社に電話。
「明日は会社にスタンバイしなくて良い。」と…。


16時
協議し忘れ事項があり、急いで打合せ現場へ。

気付いて良かった。
これを忘れたら明日またバタバタせねばならなかった。


16時半
お土産を買う。
特に悩むこともなく、何時ものお土産。
また9月に来るのだし…ただ「葉から芽」という植物を追加した。


17時
宿へ戻る。

冷蔵庫にビールが冷えており、「お疲れ様!」という言葉と共に手渡される。
書類訂正があるが、まずはと一口いただく。


18時
「いい加減、もう働かなくても良いでしょう!」と思うようになり、一人で港へ向かう。
父島写真03-26

父島写真03-27


18時半
砂浜を歩いていると干上がったドクガエルにハエが集り、ヤドカリも2匹確認。
あいつら上手く逃げたり閉じこもったりするものだと。
父島写真03-28

父島写真03-29

父島写真03-30

父島写真03-31
海亀の子供が移動した跡が砂浜に残っている


19時
何時もの店へ。
昨晩のカメの話と今晩もカメを探しに張り込む為、この店は早めにあがると告げる。

今日は最終日なので、店全体が忙しそう。
私はカメ店長の作業する調理台の近くに座ったので、彼が間違えて作りすぎたメニューをもらう。
頼むのも遠慮するくらいの忙しさだったのでラッキーだった。


20時
隣に座った初老の男性と少しだけ話しをする。
昨晩カメを見た話しをした上で、今日も産卵シーンを見たいと話す。
「9時に店を出て…。」という話をすると、「早すぎる!」といわれ、イラッとくるもそこは酔っ払い相手なので我慢。


21時
「今度は9月に来ます。」と伝えて、店を出る。

浜へ続く小道で、隣に座った酔っ払いに遭遇。
「まだ早い!」と大きな声。
何だよコイツ…と思いつつ、一緒にカメを見たくもないので一度店に戻る。


21時10分
事の次第をカメ店長に話すと、それを聞いていた女性店員が、私にカメのコースターを使えと勧める。
不思議と客が減っていた。
父島写真03-32


21時半
カメ店長に電話有り。
電話を切ると、私に嬉しそうに笑顔で話しかける。
「カメの産卵が始まったらしい!」

何なんだと不思議な感覚だったが、産卵場所を教えてもらい礼を言った後店を出る。


21時40分
浜へ向かいながら、あの酔っ払いに遭遇しなければ、
産卵前から見られたのに…とイライラするが、一度店に戻らねばカメを発見できなかったかもしれない。


21時45分
その場には小学生とその親+ガイドをする役人らしき若者。
こんなに見世物にされては感動も半減。
カメの産卵に対するこの光景を申し訳なく思う。


22時
私が怒鳴りたくなるほど小学生は騒ぎ、親の注意も言うことを聞かない。
こんなツアーは不要である。

産み落とす部位は懐中電灯で照らされ、時折、涙を流す目を皆で覗く。


22時30分
産卵は終了し、埋め戻し作業となる。

後ろ足で埋め始め、前足で埋めるのは後半。
足をかく時は行きを止めているからか、途中でため息を何度も聞く。

前足で埋める時は豪快である。
タムロする小学生に砂をかけているようにも見える。
どんどんやれと胸の内で声援を送る。

最後にダミーの産み跡を残し回転。
海へとゆっくり豪快に突き進む。
波打ち際、安心したのか2波通り過ぎるまで静止。
3波目に一気に泳ぐかと思いきや、腹がひっかかりその次の波で海へと消える。

「最後決まらなかったなぁ」とさそり座を見上げながら口にする。


23時
今宵もやはり缶ビールを購入し、ベンチにて満天の星空シャワーを浴びる。
「明日帰るのか」と虫に邪魔されながらベンチで横になる。
このまま寝てしまおうかと思ったが、
公園で裸になったタレントを思い出し、「アブナイアブナイ」と立ち上がる。


24時
宿に戻る。
昨晩、鍵を閉めなかった事を注意されたので、今夜はしっかり施錠を確認。


第5日目

7時半
起床。
今日は打合せの予定なし。

誰も電話などしてくるなよと思う。
少々の疲労感あり。


8時
風呂から出て朝食を食べるまでは、昨日と一緒。
3日間本当に嬉しい朝食タイムであった。

NHKの連続ドラマをリモコンオフ。


9時半
少しゆっくり荷物をまとめ、宿代を清算。
キャンセル料を支払うというも、宿のお母さんに断られる。
「9月にまた来ます!」と伝える。

ハンプティダンプティのような風貌ではあるが、このにじみ出るやさしさは不思議の国を連想させる。
「昨晩もカメを見た。」という話をすると、目を丸くして驚かれた。
「きっと今年あなたは happy なはずです。」と、“happy”以外はヘタクソな日本語の発音。

但し、お土産の「葉から芽」を見せた瞬間に、「裏庭にもあったのに…」とわざわざ買う必要ななかったと。
慣れたつもりで早々に土産を購入したが、お母さんに聞いてから買えば良かったと後悔。


10時
荷物を預かってもらい、島内散策。

散策といっても現場が気になり、まずは現場へ。
普通は工事前なんだからもう少し質疑だのがあっても良いのにと、今後の不安を感じる。
こういうところで自己流工事をされると非常に困る。


10時半
現場を後にし、二見港方向へ引き返す。
途中、歩道に突出した枝を切る男性。
視線を感じるので目をやると昨晩の酔っ払い。
「植木屋さん(建設業関係者)だったのね。」と昨晩の会話を思い出しても納得。
無言だが「実はこういう仕事だったのよ」と彼も気まずそう。

こちらから「昨日カメ見ることができましたよ、おかげさまで。」と伝えると、笑顔で「そう言ったろう!」と自信満々コメント。
「もっと早く行けば上陸シーンが見られたのに…。」と喉まででかかったが何とか耐える。


10時40分
やはり一度は大神山神社へ行くべきと足を向ける。
前回も記したが、この階段は厳しい。
父島写真03-33


11時
お参りと展望台にて眺望を楽しんだ。
相変わらずであったが。
父島写真03-34

父島写真03-35


11時10分
下山中、一人のおば様に出くわす。
しまったと思ったが、目が合ったので挨拶。
「もう少しかかりますよ。」とイヤミを言う。
「エ~!!」なんて可愛らしい言葉を発せられ、あまり仲良くならぬよう、少々のやり取りで足早に下山。

前回来た時は、枝が折れ枯れた大木が大神山神社の鳥居のように見えたが、その木から枝葉が出ていた、まだ生きていたのである。
隣に碑石があり、戦争時に銃弾が当たり、何と記されているか分からなくなったと説明文。

戦争の爪あとを感じる。
父島写真03-36

父島写真03-37


11時20分
お弁当を手にし、港と砂浜の間にある東屋で景色を眺める。

子供が数名、親と水遊び。
幼い子供が溺れるも親は焦らず対処。
内地の親はこれを見てどう思うのであろうか。


11時40分
突然のスコール。

スコールになろうと傘をささないのが現地の人。
確かに雨に打たれるが、太陽は出ているし暑い。

私は幸い東屋にいて弁当を食べることとする。
ここは鳥の雨宿り場所だったかもしれない。
2羽の鳥たちが羽を濡らし、私を牽制。
………と言われても、今ここから出られないでしょうと。
羽が重くなり低空飛行しかできなくなった二羽は、綺麗な歌声と共に木の茂みへと姿を隠す。
父島写真03-38
この写真の中に2羽の野鳥がいます。


12時30分
スコールは珍しく長続きし、霧状になった瞬間を見計らって宿へ戻る。

最後に濡れてしまったが、玄関でお母さんからタオルを渡される。
実はこのタオル私のもので、部屋に忘れていたらしい。
そのタオルでテキトウに足などを拭く。


12時50分
最後の挨拶を交わし待合所へ。


13時
ある方が内地に戻るらしく、派手な送別会が開かれていた。
見るとなんとなくどこかでお会いしたような気がする方。
上半身花だらけとなり、見るに無残な格好。
皆から別れを惜しまれているようだが、その真意は確認できていない。


13時半
乗船開始。

私を待ち構えていたのは工事業者。
紙袋を渡され、中身は土産かと思いきや、本当に工事の提出書類。

「何で今なのよ。」と思うが、紳士的な対応をしてしまった。
多くの方が見ているので…。


13時40分
乗船の列はなかなか進まず、雨が降ってきたこともあり、渡された紙袋は濡れだす。
かばんを開ける事ができる状態でもなく、衣服と腹の間にそれを入れる。


13時50分
船への入り口でチケットを切られるのだが、怪しいと思われたのか、腹にある荷物をチェックされる。

恥ずかしい。
こんなところで荷物を渡されるからだと、振り向き渡した本人をニラモウと思ったが、もう姿はなかった。


14時
出航の定刻であったが、まだ花まみれの方が挨拶を交わしている。
甲板ではサッカー少年集団とその父兄が、大声で叫んでいる。
「うるさい!」と怒鳴りたくなるほど。

しばらくして出航するも、雨天の為、太鼓等の催し物は省略される。


14時半
何時ものようにクルーザーのお見送りとダイビング。
今回はその数も多い。
父島写真03-39

父島写真03-40


14時40分
中に入ると待ち構えていたかのように缶ビールを渡される。


20時
宴終了。


20時半
メールチェックは間に合わず圏外。
それはそうだろうと時計をニラム。


21時
気を取り直して、打合せ議事録などの確認。


23時
波も穏やかで非常に快適な船内。
やや腰痛の再発を感じるが、あくびが出たところで就寝。


第6日目

4時50分
起床。
偶然東の窓が見える場所だったので、朝陽を感じて甲板へ出る。
日の出を見るのも久しぶり。

朝飯前に別件のコンセプトを考える。


9時
腹からのシグナルでカップラーメンにお湯を注ぐ。
朝からイタリアンシーフード味なんて食べてしまった。
赤い入れ物だったので、辛そうな何かかと思って購入したが、3分後蓋をめくった際の匂いでがっかり。


10時10分
今日は日曜日、明日も休日。
到着したら会社へ行くか、直帰するか迷う。

この休み中、会社の植物たちは水を得られているのか心配になる。


11時
風が強いから注意するようにと船内アナウンス。


13時
予定通り到着すると船内アナウンス


13時半
電波圏内となり、帰ってきてしまった感。
早くメールチェックせねば…。


14時
バッテリー切れが近づくも電源確保できずウロウロ。
一日メールチェックしなかっただけでものすごい件数だ。


14時半
電源確保。
あと1時間で到着とアナウンス。

荷物をまとめる。


14時40分
ソファに座り、メール返信。
隣に座った黒いTシャツに金のネックレス+サングラスをした二人が、大きな声で話をしている。

自然に耳に入ってきたのだが、ある工務店の悪口。
「怖いなぁ~」と。

内容も興奮してきてここに記せないような話。
島の掟というのだが、設計に掟はないだろうなぁと少々弱気。
私の顔を知ってこのコメントをしているのか、二人が私に話しかけてくる前に席を立つ。
父島写真03-41
おがさわら丸からお台場のガンダムを観る。


15時半
竹芝桟橋到着。

「お疲れ様」と挨拶を交わし、会社へ向かおうとすると、見たことある数名から挨拶される。
この夏休みを内地で過ごそうと島民もこちらへ来ているようだ。


16時半
会社へ到着。

朝顔やゴーヤ、ルコウソウ等の調子を伺いたっぷりと水をやる。
今日から「葉から芽」も仲間入り。

次回の渡航は9月。


バナースペース

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