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株式会社田中俊行建築空間設計事務所は、用途・規模・構造を問わず、あらゆる建築作品を設計する事務所です。

第19回渡航2012年5月19日(土)~24日(木)

第1日目

9時
竹芝桟橋着。

思っていたより人が多いかもしれないが、ピーク時に比べればそれほどでもない。

今回は、完全に独りでの出張。
周囲に知り合いはいない。


9時45分
乗船。

レストランの店長に会釈をして、部屋へ入る。
部屋には誰もいなかった。


10時
遅刻者がいて、5分出航が遅れるとアナウンス。
そいつが私と同部屋でなければ、誰にも邪魔されずに渡航できる。


10時5分
出航。

震災後に渡航した時も一人だったので、こういうのは1年ぶり。
早速いつものように着替えて仕事を始める。


18時
気付いたらこんな時間であった。
土曜日という事で、電話も鳴らず集中してしまった。

カップラーメンをすする。

横になったり読書をしたりして疲れを癒す。
今日は船が揺れず同部屋人もおらず、快適な休暇をプレゼントされたようだ。


22時
アルコールを摂取せずに就寝。


第2日目

5時
起床。
さすがに寝すぎである。

…とはいえ、カップラーメンを食べて、外を眺めるとあまり天気が良くない。

少し揺れ始めた。


10時
読書する目が疲れてきて、波は2mくらいで少々の揺れ。
外で幼い子供の声がするが、怪我をせぬよう親が付いていろと思う。

窓は水滴でカツオドリが曇って見える。
彼等はどこから迎えにくるのか、孤独ではないのか…。
雨の中でも狩りをせねば…空腹なのだろう。


10時10分
今回の出張は、震災直後以来の一人出張であるが、島の人々は手ぐすねを引いて待っていると噂が届いた。

加えて内地での仕事を終えられず持ってきてしまっている。
このような状況でいったいどのように滞在時間を費やすのか。
テーブルの上に置かれた書類の山をみて、ため息ひとつ。

水着とゴーグルもスーツケースに入れているが、使う事はできないのだろうか…。


11時
時間通りの到着というアナウンス。

雨が少し激しくなってきた。
加えて少々の揺れ。


11時30分
到着。

横殴りの雨である。
観光客には申し訳ない雨だ。


11時45分
常宿に到着。

ガラガラと開けるとハンプティさん、相変わらず。
いつもの部屋と、相変わらずヘタクソなニホンゴ。

それでも、「お刺身があるから、もし約束なければお昼サービスするけど?」と。
優しさに満ち溢れている。
私が一人で来ているのを知っているかのような優しさだ。

本当は皆さんにこの宿をお勧めしたいのだが、私以外の客は断っていると思う(?)。
つまり宿は貸切り状態。


12時10分
島の親分から夜のお誘い。

どこかで見られているのか…。
島の情報伝達は早い。


12時30分
ハンプティさんから昼食ができたと声がかかる。

お礼をいいながら席に着く。
刺身と白米と味噌汁。

これだけだが本当に美味しかった。
ご馳走様と言っても返事はなく、おそらく自分の用事でどこかへ行ったのだろう。

私の事を身内くらいに思ってくれているのか…。


13時
それにしても雨は止まない。

日曜日なので、少し読書をしたら出かけようと思うが、ドシャブリのため気が進まない。


14時30分
雨が止んだようなので外出する。

海は茶色く濁っている。
観光客がこれを最初にみたら何と感じるであろうか。
父島写真19-01

父島写真19-02

父島写真19-03

父島写真19-04

鳥たちも雨がやんでホッとしたか、私に釣られて歌い出した。
ただ、歌うにはちょっと風が強いか…。
父島写真19-05

父島写真19-06

父島写真19-07

父島写真19-08

父島写真19-09


16時30分
現場確認後、ベンチに座って本を読んでいると、鳥が隣に座った。

何だろうか、この不自然なツーショット。

写真に収めようとしたら恥ずかしがって離れた。
父島写真19-10

父島写真19-11

父島写真19-12


17時30分
宿に戻って、パソコンとニラメッコ。

今宵はウミガメの産卵を見ようかと妄想する。


18時30分
親分から電話。
ある店の個室にいるから来いと…。

外出する。


21時30分
親分はご年配なので、そんなに遅くまでは飲まない。
ご馳走になり別れると、浜へと向かった。


目的は、ウミガメの産卵。


21時30分
誰もいない浜へ到着すると、目の前にウミガメがいた。

誰にも気づかれないタイミングで浜へあがってきたのかもしれないが、私には見つかってしまったようだ。


浜を上がり、樹木の陰で止まった。
それから、ガサッガサッと砂を掘り、産卵するシチュエーションを作っている。

星明かりしかない暗闇で、私とカメの空間である。
カメの産卵は時間がかかるというので、しばらく待つこととした。


22時10分
カメが苦しそうな呼吸を数度するようになった。

その時、私に大きな声で話しかける男性が現れた。
「カメあがってますか」と…。
仕方なく教えると環境庁だかに携帯で報告を始め、その声を聞いて観光客が集う。

振り向くと人だかり、私がガックリ肩を落とした。


産卵が始まるとそこで産み終えるまで動かないというが、産卵前のカメは、周囲の変化に気付いてしまった。

海側へ振り向く前、首だけ私の方をむいて、数度お辞儀をした。
「ここまで静かにしてくれてありがとう」か、「お前が教えたせい…」でか。


何れにしても申し訳ない事をしてしまった。
カメは重たい体を引きずるように、海へと戻っていった。


22時30分
海洋センターの彼は、「また来ますから気にしないで」という。
私は彼の頭をひっぱたいてやりたかった。

満天の星空を半分雲に隠されてしまった。
その星空を眺めながら、同じ人間として恥じる気持ちが生じた。

世界遺産は返上して欲しいと心から思う一日となる。

人は醜い、醜いもの同士で争うのはまだ良いにして、人間よりもはるかに美しく純粋に生きる生物を汚してはならない。

酔いもしないで、こんなコメントを記してしまった。
おそらく今夜は眠れないだろう。


第3日目

5時
起床。

かなりの悪夢にうなされて、汗びっしょりであった。
2度寝を試みるも、鳥の歌声で眠れなくなる。

朝食時間は変更できないし、とりあえず仕事をすることとする。
こんな朝早くから仕事をしたことはあったか。


7時
スタッフにビッシリメールを送ると、下から朝食の匂いがしてきて、そろそろ風呂にでも入るかと階段をおりる。

ハンプティさんと挨拶し、入浴後テーブルに座る。
かなり美味い朝食であった。


8時
身支度を整え外出。

1時間かけて寄り道をしたが、鳥がいつものように歌いながら着いてくるだけで、猫や魚は姿を現さない。
鳥は相変わらず誇らしげで楽しそうだ。
父島写真19-13

父島写真19-14


9時
打合せ現場着。

私のプレゼンタイムであったが、あまり上手く説得できなかった。
昨日の観光客と悪夢が重なり、調子が出なかった。


10時
現地調査。

大きなガジュマルの樹の下に建てる計画。
巨木とニラメッコをしていると、鳥がまたその枝にとまり歌い出す。
父島写真19-15

父島写真19-16


11時
もう一つの相談で現地調査。
父島写真19-17

父島写真19-18


12時
昼食はトンカツ、情けない自分を奮い立たせるつもりだったが、腹いっぱいになっただけ。


13時
再度打合せ。
あまり調子が乗らない。


14時
工事現場へ。

職人はゆっくり島時間の休憩を楽しんでいる。
いつまでたっても仕事が始まらない。


16時
別の打合せ。


17時
先ほどの職人の様子を伺い、その後に検査。


18時
ひとり歩いて宿へ向かう。


18時30分
メールラッシュを手際よくさばく。

この出張日記が単調なのも、昨日のカメに対する人間の悪態のせいである。
私はかなり憤慨している。


19時30分
会社から連絡。
広告会社とのやり取りを、メールと電話で行う。


20時20分
フラフラと夜道を歩く。

今回、田中が来ているのは飲み屋街では伝わっているだろうが、私はいつもの店を避け、人気の少ない店へ消える。

新しい店であったが、カウンター席のため壁と会話をしながら酒を飲めということか…。

客も少ないのだからテーブル席にして欲しかったと思いつつも、本を読みながらアルコールを摂取する。


21時30分
5杯くらい飲んだら腹が満たされ、星空に誘われて浜へと向かう。


22時
一人暗闇に座るが、波の音しかしない。

人影もなく、カメが上陸する絶好のシチュエーションだが、ウミガメは現れず。

昨晩のカメは、諦めて海に産み落としてしまったのか…。


会社に連絡するとスタッフも帰るところだと聞き、携帯を切る。


23時
新たにたまっていたメールをさばき、少し早いが床に就く。


第4日目

5時
起床。
鳥の歌声で起きられるのは幸せか否か…。
朝から大合唱である。

天敵の猫が駆除されようとしているからか、鳥はかなり元気に歌う。
通りには猫は一切姿を現さなくなった。
昨日の宿題を朝から行い、朝飯前に一仕事を終える。


8時
現場へ出発。

本日、コンクリート打設のため、寄り道もせず急ぎ足。


8時20分
現場に到着すると現場代理人が私のところへ。
生コンプラントが故障していると…。

しかしながら、焦ることもなく、仕方ないだろうという雰囲気。
島の仕事はこんな感じであったことを忘れていた。
結果、打設は明日に延期となり、帰る日にまで仕事をすることになった。


10時
山の上の現場で立ち話をして、支庁へ移動。
振り回されるだけ振り回されて、薄い内容の協議事項となった。


11時30分
750円もする弁当を買って宿へ戻る。
この弁当は数度、父島出張日記に登場するおばあさんの弁当。
父島写真19-19


12時30分
ペロッとは食べられない量で、太るなぁ…と感じながら食す。

暇という訳ではないが、いろいろと考える事が多く、
数十羽の鳥たちのうるさいくらいの歌声が、私への助言・激励であればとため息。


13時
宿を出て午後の打ち合わせ準備。


13時30分
村役場にて打合せ開始。

打合せが終わっても帰してもらえない。
別案件の相談。

父島に夢をもたらす相談である。
こういう打ち合わせは楽しくて仕方ない。


15時
支庁へ移動。

優しい対応に感謝して、打合せを終える。


16時30分
現場へ移動。

蒸し暑くてズボンが気持ち悪い。
途中、宿に寄って水着に着替える。

現場に着くと、私を驚かそうと皆が待っていた。
実はプラントが修理できたらしく、コンクリート打設を完了していた。
皆は嬉しそうなのだが、打設に立ち会わねばならない私の立場を分かっていない。

まぁ、土間コンだから、必ずしも立ち会わなくても良いので…まぁ、いいかと。


帰りに「一杯行きませんか」と誘われた。
父島写真19-20


17時30分
宿に戻り、会社と連絡。


18時30分
大宴会スタート。


23時
終了。

現場の方々との交流ができて、それはそれは楽しい宴であった。
今宵はウミガメの邪魔をしないよう、早々と宿に戻る。


23時30分
就寝。


第5日目

7時
起床。
いつもよりは早起きなのに、寝坊したような気分だ。


8時30分
いつも通りに身支度をすませる。


9時
外出。

ハンプティさんにお金を渡し、「領収書はあとで寄った時に」と笑顔で伝える。

道草をしながら現場へ。
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父島写真19-22


11時
今回の渡航に関する仕事は、すべて完了。
会社に連絡。
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12時
おにぎりとお茶を購入して浜へ。

雨季だったのであまり天候には恵まれなかったが、まぁ、そんな父島も楽しめるようになったのは、通いすぎだからかもしれない。


13時
宿に戻り、ハンプティさんと談笑。
領収書をもらい、6月の渡航を約束。


13時30分
乗船。


14時
出航。

いつもの通りに、送迎船とダイビングの催し物を見物。
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14時30分
部屋に戻ると同部屋の人と挨拶。

どこかで見たことある奴と思いながら、それが誰か分かったのだが、分からないフリ。

残念ながら…ここから最悪の1日が始まる。


部屋にはベッドの他に、固定されたテーブルとイスが4つあり、その2席の背中にテレビ画面とDVDがある。

同部屋の奴(あえて奴と書く)は、テーブルにつまみを散乱させ、ウィスキーと炭酸でハイボールを飲み、おまけに自身のDVDをヘッドホンで視聴していた。

簡単にどういう環境かというと、彼のヘッドホンの線で私が椅子に座ることはできない状況。


それだけであれば、まだ許せる。
酒の力もあってか、次第にDVDを観ながら笑いだし、食べ物をクチャクチャ言いながら食べだす。
私は彼の笑い声とクチャクチャ、ズルズルを聞きながら読書。

かなりイライラは募り、デッキをフラフラ…気を紛らわす事をしていたが、何故こいつの為に私がこのような思いをするのか考えるだけで頭にきた。
これだけでも許し難いと思うのだが、私はこの際、こいつがどこまで失礼な事をやり遂げるか見てやろうと思った。


時間が経つと当然眠くなったのだろう…。
ウトウトしてきて、屁をこき、いびき。
そして夜も更けてきた頃、完全に横になって寝ていた。

部屋中アルコールとツマミの異臭、奴のイビキと歯ぎしり、こんな最悪の状態で私はベッドの中にしかいられない。
悪いけど、この状況を証拠写真として一枚撮らせてもらった。


第6日目

最悪の朝。
部屋を変わってもらいたいくらいだ。

トドのように寝ている奴を避けながら身支度をする。

昼前に奴は起きたのだが、何の詫びる言葉もなく、DVDをまた鑑賞、笑い声付き。

あとはご想像にお任せします。


15時30分
定刻に竹芝桟橋に到着。
いつも通りに会社へ向かう。


次回の渡航は6月末。


バナースペース

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